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2026.10.14

【開催レポート】官民で挑む、公共領域の組織・業務改革。大臣から現場の実践者までが語った変革への挑戦

公共サービスが止まることはありません。
人口が減っても、インフラを維持する必要はなくならず、災害のリスクは消えず、人々の暮らしは続いていきます。職員が減っても、申請は届き、窓口には人が訪れ、公共サービスは動き続けます。

人口減少が加速するなか、公共領域の現場が目指す道は、「人をどう増やすか」だけではなく、より切実に、「仕事のやり方をどう変えるか」へと移っています。AIも、業務改革も、外部との連携も、そのための手段です。

しかし、手段が並んだからといって、組織がすぐに動き出すわけではありません。その難しさは、現場にいる人ほどよく知っています。

2026年9月13日、日曜日。ミタマチテラスカンファレンスで「Publink Event 公共領域における組織・業務改革の最前線」を開催しました。共催は株式会社PublinkとプロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)、後援はデジタル庁です。

このイベントで掲げたのは、人口減少社会で不可欠になる「公共領域の組織・業務改革」です。業務改革、AI活用、アウトソーシングなど、手段はいくつもあります。しかし、それぞれの現場が単独で答えを出せるテーマではありません。

だからこそ、国・自治体・企業で実践を進めるキーパーソンが集まり、知見とノウハウを学び合い、新たな官民共創を生み出す場をつくる。目指したのは、聞いて終わりにしないことでした。

13時から19時まで、AI・組織・業務の3つの視点から、公共領域の現在地と次なる一手を議論し、最後は交流会へ。プログラムは次の通りです。

  • Session1「AIとデジタルが拓く公共領域の変革」
    国産AI「源内」の展開が始まり、行政実務は「AIを使う」段階から「AIと働く」段階へ。松本尚デジタル大臣とともに、その最前線を掘り下げる

  • Session2「『変わりにくい組織』をどう変えるか」
    省庁の内側から、伴走者の立場から、現場を横断する視点から。立場の異なる実践者が処方箋を語る

  • Session3「公共分野における人手不足時代のオペレーション変革」
    「人が足りないなら、仕組みを変える」。自治体と民間企業が組んだ窓口改革の実例をもとに、現場を支えるヒントを探る

  • Session4「Xの正体、対話にあり」
    行政DXで本当に問われているのは「D」ではなく「X」。そのXを動かすのは技術ではなく対話だという考え方から、地域版の共創会議「チッカイギ」をその場でつくる

  • 交流会
    議論の熱をそのままに、参加者同士が語り合う時間

大臣から現場の担当者まで、それぞれの立場から何が見え、何を変えようとしているのか。本音と実践知が交錯した一日を振り返ります。

※本イベントにおける発言内容や登壇者の所属・プロフィール等は、イベント開催当時の情報です。

1. オープニング ― なぜ今、公共領域の組織・業務改革なのか

最初に登壇されたのは、城内実日本成長戦略担当大臣でした。次の予定までのわずかな時間を縫って駆けつけ、官民をつなぐPublinkの取り組みと本イベントについて、「ほんとに、これは私がやりたいような仕事」と、時に笑いも交えながら熱く語られました。

城内大臣が繰り返し強調したのは、官民が出会うだけで終わらせないこと。「ただ交流するだけではだめです。具体的なプロジェクトを組成する」「今日来ていらっしゃる皆様が、起爆剤となってほしい」と、出会いから”化学反応”を起こし、具体的な成果へつなげることを参加者に呼びかけました。

その言葉は、これから動こうとする一人ひとりへの、力強い激励そのものでした。

続いて、Publink代表の栫井誠一郎は、人口減少が進むこれからを「10人で回してきたことを8人で回さなきゃいけない」と表現。AIや業務改革、アウトソーシングを活用しながら、官と民が知恵を持ち寄り、未来をつくっていく必要性を語りました。

共催団体・プロジェクトK代表の西山直人氏も新潟からオンラインで参加。政策は国だけで完結するものではなく、自治体や企業との連携によって現場で形になっていくと語りました。

Publink代表 栫井誠一郎

プロジェクトK代表 西山直人氏

日本成長戦略担当大臣 城内実氏

そして、次のセッションに入る前——。

「隣の方と1〜2分、簡単な自己紹介を」と呼びかけると、想定を超える光景が広がりました。多くの参加者が席を立ち、隣の方と、あるいは場所を移動しながら、名刺交換と対話を始めたのです。

開始からわずか30分。すでに“聞くだけではない”この日の空気が生まれていました。

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2. Session1 ― AIとデジタルが拓く公共領域の変革

続いたのは、松本尚大臣(当時)によるセッションです。

「数字で見る、日本のDX・AX」と題した講演は、マイナンバーカードの保有者1億人、DX担当が1人以下の自治体189団体、日本のデータセンター約222に対しアメリカ5,400──といった数字を起点に進みました。日本のGDPに対するデジタル赤字は0.8%。米中に二極化するAI開発のなかで、日本は「第3極」としての立ち位置を取るべきだという視点が示されました。

デジタル大臣・国家公務員制度担当大臣(当時) 松本尚氏

そして、このセッションの大きな見どころとなったのが、講演後の質疑応答でした。

使われたのは、リアルタイム質問ツール「Slido」。会場とオンラインの参加者が質問を投稿し、共感した質問には「いいね」を押す。票の多い順に大臣へ投げかける仕組みです。匿名投稿も可能とし、30分の講演後、20問近くの質問が次々と寄せられました。

集まった質問は、決して答えやすいものばかりではありません。ガバメントクラウドの米国企業への依存への指摘、マイナンバーカードの推進手法、システム担当が組織内で評価されにくい構造、政府クラウドへのサイバー攻撃への対応——。

松本大臣は、そのほぼすべてにその場で回答。システム担当者の処遇をめぐる問いには「確かにそのとおりだな」と応じ、働きかけに言及しました。デジタル人材の目標値が「研修受講者数」で積み上げられていた点についても、課題を認めたうえで、新たな検討を始めていることを明かしました。

参加者が今いちばん聞きたいことを投げかけ、その答えをその場で受け取る。さらに、どの問いに多くの共感が集まっているのかまで全員で共有する。

誰もが受け身ではいられない、双方向ならではの密度の高い時間となりました。

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3. Session2 ― 「変わりにくい組織」をどう変えるか

「5年、10年かけたらきっとできる。でも、それを1年でやる、3か月でやる。そのスピードがすごく大事」

野村総研の水石仁氏が投げかけたのは、AI時代の組織改革に必要な“時間軸”でした。

水石氏、GovTech東京の杉井正克氏、経済産業省の猪股裕氏が、「変わりにくい組織」を動かす方法を議論しました。

AIで個人の業務が3割効率化しても、空いた時間を別の仕事で埋めれば、組織の生産性は変わらない。水石氏は、残る3割をより付加価値の高い仕事へ移すためにも、経営・幹部のコミットメントが不可欠だと指摘します。

経産省では「1年目は幹部が変わる」「2年目は現場が変わる」「3年目はみんなで変わる」と改革を展開。杉井氏からは、自治体DXを支える担当者同士の”横のつながり”の重要性も語られました。

質疑応答では「すべてもう首がもげるほど同意しながら聞いておりました」との声も。華やかな成功事例だけではない、DX・業務改革の苦労や葛藤まで率直に語られた60分でした。

写真左より
株式会社野村総合研究所 経営役 コンサルティング事業本部 副本部長 水石仁氏
デッカイギ2027運営部会長/(一財)GovTech東京/(一社)DITCC理事 他 杉井正克氏
経済産業省 大臣官房業務改革課 課長補佐/一般社団法人ちいきん会 運営事務局プロデューサー 猪股裕氏

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4. Session3 ― 公共分野における人手不足時代のオペレーション変革

「頑張れって言って職員壊したらどうするんだ」

裾野市長・村田悠氏のこの一言から、人手不足という大きな課題が、一気に“現場の話”になりました。

村田氏、成田国際空港の菅井理博氏、トランスコスモスの高山智司氏から語られたのは、すでに動き始めている具体策です。

裾野市では、窓口改革によって10分以上の待ち時間を7分の1に、ワンストップ窓口では滞在時間を55%削減。さらに、トランスコスモスが学校の電話対応をコールセンターで受ける実証では、電話の6割が業者などからの連絡で、教員につなぐ必要のない問い合わせも多いことが見えてきました。

成田空港では、約600社・4万人以上が働く巨大な現場をデータで横につなぎ、約50機関で情報を共有。台風によるフライト変更時にも、事前に人員配置を変えて大きな混乱を防いだ事例が紹介されました。

そして高山氏から飛び出したのが、「社会課題はゴールドラッシュ」という言葉です。同社の公共関連売上は、2018年当時の11億円から120億円へ。さらに政府が戦略17分野への官民投資を進めるなか、「公共領域そのものが成長産業になる」と語りました。

人手不足を“もっと頑張る”で乗り切らない。業務を見直し、外に出し、データでつなぎ、仕組みを変える。具体例と本音、そして登壇者の明るい掛け合いが次々と飛び出し、重いテーマを「だからこそ、変えられる」に転換するセッションとなりました。

写真左より
トランスコスモス株式会社 上席常務執行役員 高山智司氏
成田国際空港株式会社 オペレーションセンター部長 菅井理博氏
裾野市長 村田悠氏

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5. Session4 ― Xの正体、対話にあり ―「チッカイギ」を一緒につくる―

「皆さん、気づいたらあっという間にチッカイギの参加者に今なってるんですよ」

最後のセッションは、それまでとは少し趣を変えた“対話の時間”です。

登場したのは、行政デジタル改革共創会議「デッカイギ」を運営する北野菜穂氏、遠藤芳行氏、そしてSession2に続いての登壇となる杉井正克氏。デッカイギは、行政DXに関わる人たちが、組織や立場を越えて本音を持ち寄る場です。直近回には489名が参加し、民間向けの参加枠はわずか約2分で満席になったといいます。

その地域版・テーマ版が「チッカイギ」。AI、防災、地域の”モヤモヤ”、さらには「マスメディアの生態系」まで、テーマは自由自在です。大切にしているのは、聞いて帰るのではなく、自分も話すこと。失敗や課題まで安心して持ち寄れるよう、デッカイギでは発言者を外部で特定しない「チャタムハウスルール」も採用しています。

官と民では、仕事の進め方も常識も違う。だからこそ、互いを知り、話す場をつくる。「対話が足りないと、敵対関係になる」という言葉も印象的でした。

軽快な掛け合いと遊び心、お祭りのような熱気の奥にあるのは、改革を動かすのは、結局、人と人が本音で話せる関係なのではないかという問い。

その場そのものを“チッカイギ”に変えてしまう、ユニークな30分となりました。

写真左より
デッカイギ2027副実行委員長/(株)アスコエパートナーズ取締役/(一社)DITCC理事/(一社)GovTech協会理事 他 北野菜穂氏
デッカイギ2027運営部会長/(一財)GovTech東京/(一社)DITCC理事 他 杉井正克氏
デッカイギ2027元老院/NPO DGL代表理事/千葉市CIO補佐監/総務省地域情報化アドバイザー 他 遠藤芳行氏

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6. Rimo Voice紹介、そして第一部から交流会へ

第一部の最後に登壇したのは、AIツールスポンサーのRimo合同会社・相川直視氏です。

Session2、Session3では、「Rimo Voice」を実際に活用。登壇者の発言をリアルタイムで文字起こししながら、議論のハイライトや論点、次に聞くべき質問までスクリーンに表示しました。

紹介パートではさらに、当日のQ&Aからアクションアイテムを抽出したり、複数セッションを横断してレポートを生成したりする様子を実演。現在2,000社を超える企業で利用されているRimo Voiceが、会議の「記録」にとどまらず、その先の整理やアクションまで支える姿が示されました。

松本尚デジタル大臣・国家公務員制度担当大臣(当時)とのセッションで活用したSlidoも含め、AIやデジタルツールをテーマとして語るだけでなく、イベントそのものの中で実際に使い、その可能性を体感する。この日の議論を象徴する場面のひとつとなりました。

Rimo合同会社 代表社員 相川直視氏

振り返れば、この日の「本音」は、偶然に出てきたものではありませんでした。Slidoによって参加者の問いを可視化し、Rimo Voiceによって議論の論点を可視化する。さらにセッションの合間には、隣の人と話す時間も挟みました。

聞くだけの時間をつくらない。話しにくいことを、話せる形にする。その努力の積み重ねが、この日の密度をつくっていました。

第一部の締めくくりに、Publink代表の栫井から伝えたのは「これからは皆様の番です」というメッセージ。

ここから、第2部の交流会へと移ります。

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7. 交流会 ― 「場」と「Bar」から、次の共創へ

「イノベーションは”場”と”Bar”から生まれる」

Publink Summitの際にも紹介したこの言葉を、今回も第一部のクロージングでPublink代表の栫井から参加者へ。ここまでがインプットなら、ここからは参加者自身が主役になる時間です。

13時の開会からすでに4時間半以上。それでも途中で帰る人は驚くほど少なく、現地参加者89名のうち74名、実に83%が交流会まで参加しました。

アンケートでも交流会の満足度は回答者全員が「満足」以上。現地参加回答者の85%が「今後の参考となる出会いがあった」と答えています。

Publink Summitに引き続き、栫井の弟が島根県出雲で手がける日本酒を用意。ところが印象的だったのは、お酒以上に会話が進んでいたことです。日本酒を片手に、セッションで生まれた問いや気づきをきっかけに、会場のあちこちで新たな会話が始まっていきました。

登壇者、公務員、企業の参加者が立場を越えて話し込み、終了のアナウンスのあとも、名残惜しそうに言葉を交わす姿があちこちに。最後の最後まで、交流の熱は途切れませんでした。

セッションを聞いて終わるのではなく、その場で出会い、次の相談や共創につなげていく。今回も、そんなPublinkのイベントらしい光景が最後まで広がっていました。

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8. 参加者・登壇者の声

イベント終了後のアンケートでは、全体満足度「とても満足+満足」96.8%。セッションでの議論から、官民の出会い、交流会、AIツールの活用まで、さまざまな声が寄せられました。

「デジタル大臣の自治体に対しての考え方がわかったので、自分たちの業務の意図がわかりました」
「大臣が本音で話していたこと」
「行政の内側でDXを推進していこうとされている方が見えている景色や問題意識を、生の声として聴けて非常に参考になりました」
「官民交流を望んでいる官公庁の方が多いということに単純に驚きました」
「デッカイギの話よかったです」
「自分の省の組織的な課題、個人的なキャリアの相談について本当に親身に受けられた。本当に今日来てよかった」
「途中から参加したが、文字起こしと論点がまとめられた画面が表示されており、いつからでも追いつける仕組みになっていた」

政策や事例を知るだけでなく、普段は見えにくい相手の考えや悩みに触れ、直接言葉を交わす。寄せられた声からも、そんな時間がこの日の大きな価値になったことが伝わってきます。

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9. スポンサー・パートナー紹介

本イベントは、多くの団体・企業の皆さまのご支援・ご協力のもと、開催することができました。官民共創の可能性を信じ、この場をともに創り上げてくださったスポンサーの皆さまに、心より感謝申し上げます。

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10. 終わりに

冒頭に並べた言葉は、この日、それぞれの登壇者から実際に語られたものです。大臣も、市長も、行政の現場も、企業の実践者も。それぞれの立場から、同じ課題に向き合い、率直な言葉を交わしました。

「Publink Event 公共領域における組織・業務改革の最前線」にご参加いただいた皆さま、登壇者・オフィシャルパートナー・スポンサー・運営スタッフをはじめ、本イベントに関わってくださったすべての皆さまに、心より御礼申し上げます。

イベントで生まれた出会いや議論を、その日限りで終わらせないこともPublinkの役割です。ここから新しい相談や連携、そして具体的な共創へ。

2026年10月現在、次のPublink Eventの企画も進めています。詳細が決まり次第、改めてお知らせします。

「『日本に生まれて良かった』と未来でも言ってもらえる国へ」。その実現に向けて、これからも挑戦を続けます。

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執筆
:Publink Event運営事務局

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